『 Fascinated by you. 』by.takemi

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『 Fascinated by you. 』by.takemi

【かわりのことば 『Will you please dance with me.(一緒に踊っていただけませんか?)』 遠くに望む紳士と先程から目が合う。 彼を見かけたのは、今夜で三度目だった。 夜だというのに眩しいくらいに華やいでいる。 結婚相手を探すだけのために紳士淑女が集うこのダンス・パーティーは、手を取りワルツを踊るだけで花開くときめきも感じない。 窓外に見える月に誘われ一人開け放たれたバルコニーに出ると、暗がりで紳士は蜜のように甘い言葉で淑女を恋に誘い出している。 自分は蜜に満たされる事も無く、今宵も月が話し相手。 この足は踊りたくもない。 「レディ、お隣良いですか」 声をかけられ横に立つ紳士を見上げると、先程まで遠くに望んでいた彼がすぐ横に立っている。 青い瞳はまるでガラス細工のよう、そして金色の髪は先程まで話し相手になっていた満ちた月。 ふたり見つめ合うだけで、一瞬で恋に落ちた。 「先程から目が合っていたのを、ご存知だったの?」 「お見掛けして三度目の今夜、貴女ばかり目で追ってしまった。幾度夜が訪れても貴女は誰とも踊らない。私の気持ちはお分かりでしょう、美しいレディ」 「お会いするのは、今夜で三度目と分かっていたのですか?」 うなずく彼は手の甲に接吻をすると、耳元に優しく囁いてきた。 「Will you please dance with me?(一緒に踊っていただけますか?)」 豊かな髪を飾る白い薔薇を引き抜き、返事代わりに彼のテールコートの胸元に飾る。 「“I'd love to(喜んで)」 優しく腕に包まれ、ふたり恋に落ちる媚薬代わりに唇を重ねる。 満ちた月は恋に落ちた二人を、炯々と照らしていた。 〈あなたに魅せられました〉 by.白鳥武美さま https://estar.jp/users/153034174
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