結婚祝い(エリオット)

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「どこの誰が、刺客か分からなかった。故に王族の振る舞いで気を引き、連れ帰って事情を説明しようと思ったのだが、大事になってしまった。あの男の気性まで計算に入れていなかった」  王族の芝居をしたまま、振る舞いも崩さないままで接触して連れて行きたかったということか。こちらを知らないとはいえ、無謀な事だ。 「ついていくと思ったのですか?」 「こちらが王族というだけで自国ではついてくる。ましてハーレムに入れてやると言えば女も男も喜んでだ」 「文化の違いを計算に入れてませんね」 「それに気付くのが遅れてしまった。無礼を詫びたい」 「もう、いいですよ」  国が違えば文化が違い、文化が違えば常識が違う。これはまさにそういうことだ。 「今はこれ以上の事は勘弁してもらいたい。俺ごときが言える事は限られているんだ。いずれ、知れる事だと思う」 「分かりました」 「時に、医者先生。この国に俺の様な特徴を持った者は、いないだろうか?」 「え?」  突然の問いかけに、エリオットは言葉を詰まらせる。すぐに一人の青年の顔が浮かんだ。  だが、思った以上に重そうな彼らの事情を知る前に明かす気にはなれないのだ。 「俺のような癖の強い黒髪に、屈強な体つきの……瞳が、金色の人物を知らないか?」 「分かりませんが……そのような人物がこの国に?」  いる。癖の強い黒髪に獣のような金の瞳、頑強そのものの騎士を。     
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