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合わせるベストは光沢のある上品なシルバーグレー。首元のタイは瞳の色に合わせた淡いグリーン。
それらに袖を通し、鏡で見た自分の姿に照れてしまった。普段あまりオシャレなんてしないから、こんな仕立ての良い物は式典用の服くらいしか知らない。
「本当によく似合うわ。こんなに素敵な息子が出来るなんて」
嬉しそうに言うステイシーに、エリオットも柔らかく微笑んだ。
思えばとても長かった気がする。最初は苦手だと思っていた相手。勝手に意識して、反発もあって。でも少しずつ、必要になっていった。
目が離せない、いて欲しい人になったのはわりと最近。数年前のこと。互いの思いを通わせた後は、めまぐるしくも満ち足りた日々だった。
「結婚しよう」と言われてからも長かった。互いに忙しい身の上で、しかも変革期のように戦いが続いた。
両家に赴き、挨拶をして、指輪を作っている間にジェームダルとの戦いになって。落ち着いたのは、本当に最近だ。
「あら、オスカル兄さんの隣りに立つんですもの。このくらいは当然よ」
オーレリアが胸を張って言う。淡い紫色のドレスを着た彼女はジッとエリオットを見据え、薄く笑みを浮かべた。
「お似合いよ、エリオット義兄様」
「有り難うございます、オーレリアさん。ステイシーさん」
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