水の都ローベルク(エリオット)

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 予約の宿はメイン広場から陸続きの、一際豪奢な建物だった。元は大貴族の屋敷だった建物は当時の雰囲気を残したまま、ボーイもとても礼儀正しく教育されている。  部屋はスイート。キングサイズのベッドと調度品が飾られ、ウェルカムドリンクや室内浴室も完備されている。 「奮発したかいがあったね!」 「本当に、奮発しましたからね」  ソファーに腰を下ろしたオスカルはご満悦。その後ろからついてきたエリオットは落ち着かない気分で室内を見回してしまう。初めての場所は大抵落ち着かないのだ。  一緒になろうと約束してから、二人で少しずつお金を貯めて。必要なものはそこから出し合って揃えようと言っていた。  けれど実際、必要な衣服はアベルザード家から贈られ、会場は城となり、そこで提供された料理などの費用は近衛府と医療府が「お祝い」として出してくれた。  結局かかった費用は指輪の代金だけだった。  それに加えて約束してから今日まで、予想以上に長い時間がかかっていて、予想以上に積立金額が多くなっていた。  皆はそれで旅行にでも行ってこいと送り出してくれて、こんな立派な宿まで押さえられたのだ。 「この季節は宿を取るのも大変だからね。ここ、この屋敷の主の主寝室だったんだって。窓からさっきの教会、見えるよ」  重厚なカーテンを開けてみると、確かに教会の鐘撞き堂が見える。     
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