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オスカルの腕がエリオットの頭に回って、引き寄せられる。そして、振り向いたオスカルととても静かなキスをした。
「……オスカル、しないんですか?」
触れた唇から伝わる、愛していると熱情。見つめる視線に色気がある。欲しそうな、男の目をしている。
それでもオスカルはこの旅行の間、エリオットを抱きはしなかった。一緒に眠って、一緒に起きて。抱き合って眠る前にキスをするだけだ。
オスカルは困った顔をする。濡れた瞳で、それでも押し殺すようにする。
「旅行の間は二人の旅を楽しみたいから、しないって思ってたんだけどな。抱き合う事はこれからいつだって出来るし」
「しないんですか?」
確かにこれからは一緒の部屋になる。毎日同じ部屋の同じベッドで眠り、起きる。抱き合う事も気分が乗ればいつだって出来る。
けれど旅も今日が最後の夜だ。明日は朝食をとったら帰るだけ。それなら、最後の思い出を作ってもいいと思う。
「オスカル」
「ごめん、意志が弱いよね……欲しい、エリオット。今日は君を抱いてもいいかな?」
濡れた青い瞳が男の色気を纏って見つめる。空気が変わる。これに抗う事なんて出来ないし、するつもりはない。エリオットもまた、欲しているのだ。
「勿論です、オスカル。抱いて、頂けますか?」
「喜んで」
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