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「馬具がついたまま、旅装も積んでいます」
「何かあったかな」
関わると帰りが遅くなるが、行かないという選択肢はほぼない。馬を木の枝に軽く結わえたエリオットが頷き、二人は林の中へと馬を走らせた。
先を行くエリオットの馬術はいつ見ても惚れ惚れする。足場の悪い木々の合間をものともせず走り抜けていく。騎兵府副長の実力は今も健在なんだろう。本人は否定するのだろうけれど。
「誰か! 誰か助けてください!」
「!」
遠く、僅かに少年っぽい声が助けを呼んでいる。その声に覚えがあった。
「エリオット、昨日の」
「急ぎますよ!」
馬の腹を蹴ったエリオットが更に加速して、オスカルもそれを追う。グングンと木々を抜けた先で、二人は五人ほどの男に囲まれている旅人二人を見つけた。
側には五人の男が倒れている。襲われ、逃げ込んで、抵抗したのが分かる。
剣を構えたジャミルの後ろで、必死に声を上げているラティーフがこちらを見て涙を流した。
違和感は、やっぱり正しかったんだ。
走り込んだエリオットが騎乗したままレイピアを抜き、気付いた男の首を躊躇いなく串刺しにして払い除ける。オスカルも剣を抜いて側の男を切り伏せた。
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