嵐の正体(オスカル)

3/10
前へ
/71ページ
次へ
「馬具がついたまま、旅装も積んでいます」 「何かあったかな」  関わると帰りが遅くなるが、行かないという選択肢はほぼない。馬を木の枝に軽く結わえたエリオットが頷き、二人は林の中へと馬を走らせた。  先を行くエリオットの馬術はいつ見ても惚れ惚れする。足場の悪い木々の合間をものともせず走り抜けていく。騎兵府副長の実力は今も健在なんだろう。本人は否定するのだろうけれど。 「誰か! 誰か助けてください!」 「!」  遠く、僅かに少年っぽい声が助けを呼んでいる。その声に覚えがあった。 「エリオット、昨日の」 「急ぎますよ!」  馬の腹を蹴ったエリオットが更に加速して、オスカルもそれを追う。グングンと木々を抜けた先で、二人は五人ほどの男に囲まれている旅人二人を見つけた。  側には五人の男が倒れている。襲われ、逃げ込んで、抵抗したのが分かる。  剣を構えたジャミルの後ろで、必死に声を上げているラティーフがこちらを見て涙を流した。  違和感は、やっぱり正しかったんだ。  走り込んだエリオットが騎乗したままレイピアを抜き、気付いた男の首を躊躇いなく串刺しにして払い除ける。オスカルも剣を抜いて側の男を切り伏せた。     
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

332人が本棚に入れています
本棚に追加