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静かに見据えたオスカルだったが、ラティーフはそれでも口を割ろうとはしなかった。
「君が彼の従者であるならば、君はジャミルを庇って死んでいたっておかしくない。従者、しかも奴隷上がりならそのように教育されているはずだ。
けれど実際傷を負って倒れたのはジャミルだ。彼は君を自分の背後に庇って、自ら剣を抜いて戦っていた。王族はまず、自分が戦うという選択を奥の手にしておく」
「それは、私が戦力にならないくらい弱いから……」
「戦力にならなくても、盾にはできる」
ピシャリと言えば、それっきりラティーフは言葉を詰まらせて俯いた。
「それに、主導権はずっと君にあった。昨日会った時から、違和感はあったんだ。主であるジャミルではなく、君が行動の主導権を握って会話をしていた。普通主の意志を確認せずに従者がそんな態度を取れば、不敬だとして殴られてもおかしくない。特にジャミルは尊大な態度を取っているしね。なのに、黙っていた。両者のパワーバランスは、明らかに君に傾いている」
それを感じたからこそ、何かあると思った。そんな訳ありな二人が王都を目指していると聞いて、オスカルは嵐の予感がしたのだ。
ラティーフは暫く黙った後で息を吐き、そっと右目の眼帯を外し、目を開けた。そこには、金に強く光る瞳があった。
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