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結婚祝い(エリオット)
無事にジャミルの治療を終えたエリオットは、ほっと胸を撫で下ろした。
出血の多さと、二カ所深い部分はあったが持ちこたえた。今は静かに眠っている。
元々体力があるのだろう。服を脱がせた体は騎士のように逞しく強健だった。厚い胸板のおかげで襲撃者のダガーは肋骨までも到達はしていなかったし、硬い筋肉のおかげで肩の傷も思ったよりも深くなかった。
だが、それとは違う気になる所見があって、現在考えてしまっている。
「ん……」
僅かな声に、ピクリと動く体。青い瞳がぼんやりと天井を見上げ、次にエリオットを見た。
「あぁ、アンタか……」
「体の具合は、どうですか?」
側に近づいて問えば、軽く指を握ったりして確かめている。多少痛そうだが、動きにぎこちなさはないように思う。
「大丈夫そうだ」
「それはよかった」
穏やかに微笑んだエリオットを見上げる、野性的な青い瞳。だがそこに、昨夜の勢いは見えなかった。
「ジャミルさん」
「なんだ」
「……貴方は、貴族でも、ましてや王族でもない。違いますか?」
エリオットの問いかけに、ジャミルは過剰な反応はしなかった。ただ静かに凪いだ瞳でこちらを見るばかりだ。
「どうして、そう思う」
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