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【R18】新婚初夜(エリオット)
宿に戻ってドッカリと腰を下ろしたオスカルに、エリオットは苦笑して水を差し出す。受け取った彼は珍しく行儀悪く飲み干した。
「荒れていますね」
「あのね、本当にサーッと血の気が引いたんだからね。エリオットがあいつに迫られてるの、すっごく嫌だった」
それでも、威嚇だけで終わらせてくれたのだ。
わりと好戦的な性格でもあり、後に引きずらない分その場の沸点は低いオスカル。この言いようなら、きっととても怒ったのだろう。あの場で即刻乱闘騒ぎでもおかしくはなかったのだ。
それでも押さえてくれたのは、この旅に嫌な思い出を残したく無かったから?
ソファーでふて腐れているオスカルを背中から抱き寄せたエリオットは、見えている耳にそっと口づける。お揃いのピアスが視界の端に見える。
「以後、気を付けます」
「……うん。僕も、もう少し大人になるよ」
「もう十分大人のはずなんですがね」
「そういう意地悪言わないでよ」
そろそろ三十が見えてくる年齢だけれど、そんなのはまったく分からない。大人の顔は仕事の時だけで、エリオットに見せるのは自由な姿ばかり。
そしてそんな姿を、好ましく思っている。
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