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読者は基本的に主人公が得をした瞬間が好きです。
勝利した、報酬を得た、かけがえのない仲間を得た。
そういう状態にするにはまず主人公は「勝っていない、報酬を与えられていない、仲間もいない」状態にする必要があります。
今回の場合、
主人公はなぜ勝っていないのか?⇒地位の低い魔族だから、役者として成功していないから
主人公はなぜ報酬を与えられていないのか?⇒魔王の役は数が少ないから、実りの少ない仕事しかもらえないから
主人公はなぜ仲間がいないのか?⇒魔界から越してきて間もないから
これ、私は二週読んでいるからわかりますが、一週目だとわかりませんでした。
初めて読む読者に読んでもらうには初めて読んだ時から「主人公の損」をわかるようにしてもらわないといけません。
上の「今の主人公はなぜ不足した状態なのか?」を誰にでも理解してもらう一番の方法が『世界観の説明』だと思います。
そこがしっかりしていると主人公の努力が映えてくると思います。
逆に、ヒューゴの貧困についてはかなり説得力がありました。
これは上記の『読者が物語を勝手に補足する』行為を「魔王」という共通言語がうまく働いてくれたからです。
働きたくても働く場所が少ない、狩りをしたくても力加減が難しい、実りを撮りたくても他に競合者が居る、そして貧乏の中でも施しを受けるほど卑しくなったわけではない。でもやっぱり貧乏。
この部分に置いてかなりわかりやすく、感情移入しやすかったです。
魔王だから役どころが少ない、目立ちすぎる、子どもが怖がる、力が強すぎて力加減が難しい。
わかりやすいです。作者の魔王のイメージと私の魔王のイメージがピッタリ合っているからです。説明がなくてもわかるというのは魔王という共通言語があるからです。
そしてそのイメージを元に切迫した状況への布石がしっかりと貼られており、矛盾する要素が見られないため「こういうものなんだな」とすんなり理解できました。
そのためカリンが魚を大量にとって来れた時の「ああ、良かった!」感はしっかり受け止められました。
あと「カリンお前意外とやるな」感もすごかったです。
【まとめ①】
世界観の情報を出す順番が出来事より後だったため、感情移入しきれない部分がありました。
描写力が高くて話を読みすすめられるがゆえのジレンマを抱えているように思えました。
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