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男はホーム脇に石碑があることに気づいた。そこには、
『古より続く姥捨の伝承は他に知られてはならない。もし知ってしまった者の始末は隠婆が行う。他の者を匿った場合、その者も始末する。』
背筋が凍るような内容の碑石。駅の名前でもある“隠婆”という言葉に男は酷く怯え始めた。
「どうしましたか。お客様。」
男は声のする方へ顔を向けた。それはただの恐怖でしかなかった。もしかしたらおぞましい姿をした“隠婆”とやらがいるのではないかと思いながら…。
「なんだ… 駅員か。よかった…」
「お客様どうされましたか?」
男は恐怖から解放され安堵した。だが同時に怒りも混みあげて来て、駅員の胸ぐらを掴み怒鳴りつけるよう言い放った。
「おい、駅員。此処はどこだ、早く帰らせろ、それとあの碑石はなんだ。早く答えろ??」
「落ち着いてください、お客様。1つずつ答えさせていただきます。」
駅員はひと呼吸置いてから男に話をはじめた。
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