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 動きを止めて目を瞬かせれば、そこには崩れそうな古い建物はなかった。鬱蒼とした森の中に、大きな洞窟が口を開けている。  洞窟の中では、まるでブルーオパールのような羽を持つ蝶が舞っていた。そこかしこの地面には、鉱物の結晶が洞窟の入り口から差し込む微かな光を集めてきらめいている。その鉱物の間を縫うように、銀の輝きを放つ花が、地面から伸び上がるようにして群生していた。別のところには、まるで夜空に散る星のように、白青(しらあお)の花が咲いている。  洞窟の中に一歩足を踏み入れた。宝石の採掘場だったのか、地面には鉱物の欠片が無数に散らばっている。まるで色硝子を敷き詰めたようだった。  しゃがみ込んで、欠片の一つを拾い上げようとした。研磨されていない鉱物の先は尖っている。その尖った先端が指に触れた時、痛みを感じた。次の瞬間に夢であるはずなのに、痛覚があることに驚く。鉱物の先端を触った指先には、赤く細い筋ができていた。  動揺していると、まるでそれに呼応するように、ざわざわと、不意に空気が揺れ始めた。群生していた銀の花の薄い花弁が震える。  すると、銀の花は急成長を始めた。竹のようにぐんぐんと伸び上がり、花どうしが互いに絡み合って太い束になっていく。花は洞窟の天井まで届くと、行き場を失くしたためか、今度は洞窟の奥へと吸い込まれるように伸びていった。  すると暫くして、すべてを押し流すかのように洞窟の奥から大風(おおかぜ)が押し寄せる。その風に乗り、甲高い笛のような音を響かせながら、白銀の龍が飛翔してきた。  龍が頭上を過ぎ去る時、今までで一番強い風が吹き荒れ、鉱物も白青の星の花も、すべてさらっていってしまう。  きらめく光に、暗い洞窟の中がまるで宇宙であるかのように思われ、視界は一瞬にして、漆黒の空を彩る星空に埋め尽くされた。
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