1人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
「っ……!!」
瞳ははっと目を見開いた。部屋中に、耳をつんざくような、けたたましい音が響いている。
「はぁ……目覚まし……」
大きく息を吐き出しながら、目覚まし時計のアラームを止める。動悸が速い。身体が冷えていた。
「……寒い」
ぼそりと呟いて、再び布団の中に潜り込む。
――……そうだ、お守り…。
ふと瞳は腕を伸ばして、目覚ましの横に置いてある桜色の玉を掴んだ。直径二、三センチのそれをぎゅっと握り込んで、動悸が治まるまで、縮こまって待つ。
――怖かった……。
我知れず息を吐く。
「姉ちゃーん。おきてるー?」
「……」
階下から呼ぶ声がするが、だんまりを決め込む。呻きながら頭まで布団を被った。まだ身体は冷えていたからだ。けれど、呼び声は終わらない。
「姉ちゃーん、おきろーっ。ごはんできてるんだよー。……今日入学式でしょー」
「――……。うわっ、そうだった、遅刻!」
一瞬黙り込んだ後、弾かれたように飛び起きた。慌ただしく部屋中を駆け回る。
いつもよりも長い春休みの間に、すっかり寝坊癖が付いてしまっていた。かといって、普段はそうでないと、言えるわけでもないのだが。
最初のコメントを投稿しよう!