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「は? 瞳、あんたそんだけのために、お賽銭入れてきたの?」
目を丸くした実喜に、瞳は口を尖らす。
「まぁ、お願いはそれだけじゃなかったけどさぁ…。どっちにしても、結局緊張したよね……」
ため息と共に肩を落とす瞳を見て、実喜がぷっと吹き出す。
「ん? なんで笑うのよ、実喜」
不服そうな顔をした瞳に、奇乃もくすくすと笑い始める。
「もーっ! 奇乃まで!!」
一人置いてきぼりの瞳は叫ぶ。
「いやぁ、瞳は可愛いなぁと思っただけよ」
「何それ」
笑みを堪えながらの実喜の言葉に、やはり瞳はふくれっ面だ。
「まぁ、そんな膨れないで。ほら、帰ろ」
相変わらず笑いを堪えながら、実喜は瞳を促す。
「もー。誤魔化さないでよー」
不満そうに言いながらも瞳は立ち上がる。学校指定の通学リュックを背負った。
「瞳こそ、なんでそんな気にするかねぇ。可愛いって思ってるだけだって言ってんのに。ねぇ、奇乃?」
実喜も同じくリュックを背負い、同意を求めて奇乃の顔を見る。
「笑われる覚えがないって言いたいの、私は!」
瞳は顔をしかめて主張する。
「可愛いものを見て笑顔になるのは、普通のことじゃない」
「あのねぇ……」
おどけてみせる実喜に、瞳は増々顔をしかめる。リュックを背負った奇乃は苦笑する。
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