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まじまじと見詰められて気分を害したのか、少年は眉間にしわを寄せた。発された声は抑揚が乏しく、声変わりを終えた低い声だった。
「えっ!? えっと、あの……っ」
思わずじっくりと、少年を見ていたことに気付く。見惚れていたなどとは言えず、しどろもどろになりながら、ようやく言うべきことを思い出す。
「あっ! え、えっと! あ、ありがとうございましたっ!!」
あたふたと慌てて頭を下げると、少年は虚を突かれたように目を瞠った。息を呑む音がする。あからさまに困惑しているようだった。瞳は頭を上げ、そんな少年の反応に首を傾げる。
「どうか、しましたか?」
「……いや、……別に……」
少年は相変わらず抑揚に欠けた声音で、詰まるように喋った。視線が泳いでいる。
その時、またふいにざざっと木の葉が風に揺れてざわめく。
瞳はおもむろに御神木を仰ぎ見る。今はすっかり消えた頭痛を思い出し、こめかみを押さえながらぽつりと呟いた。
「……なんだったんだろう、さっきの突風……」
「突風……?」
「え?」
怪訝そうな声が返ってきたので、瞳は思わず声の主を見上げた。少年の顔は、険しそうに御神木を睨んでいる。
「あの……」
瞳は恐る恐る声を掛ける。すると少年は急にきっと瞳を睨んできた。
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