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 獣の声なのか、風の音なのか見当がつかない。だが、そんなことを考えるより先に、相変わらず耳の奥で響く低い唸り声だけを残して、思考は遠退く。すべての感覚は(もや)を掛けたかのように朧気(おぼろげ)に歪み、闇と同化するかのように消えていった。      ◆   ◆   ◆
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