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入学式は滞りなく終了した。最初のホームルームと担任挨拶も終わった今、窓からは午後の温かな日差しが差し込んでいる。あとは帰宅するだけの教室内は騒がしい。瞳は自分の席の背もたれに体重を任せていた。重荷が一気に下りたような気持ちがして、ぐったりと天井を見上げる。
そんな瞳と天上の間に、少女の呆れ顔が乱入してきた。ボブカットの髪が零れ落ちてくる。
「なぁに、ぐったりしてんのよ」
「だって実喜ー…」
瞳は少女に言い返す。木下実喜は嘆息した。
「入学式ごときで緊張することでもないでしょ。立派に代表をこなした奇乃なら、話は別でしょうが」
「本当ね。緊張したよ」
苦笑しながら控えめに横からもう一つ声がした。実喜は悪戯っぽくにっと笑う。
「何言ってんの。しっかりこなしてたくせに」
「そうだよ。なんで緊張しないの、奇乃ー」
瞳は体を起こし、拗ねたように彼女を見た。
「だから緊張はしたんだってば…」
困った笑顔で、鏡奇乃は少し肩を竦める。ポニーテールの長い髪が、それに合わせて揺れた。
「もう私なんかさぁ、昨日、緊張しないようにって、神社にお参りにまで行ったのにさぁー」
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