3

1/21
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ

3

 実喜と奇乃とも別れ、瞳は一人家路についていた。  あらかじめ母からは、式が終わったら買い物をしに隣町に行って来るため、留守番を頼むと言われていた。ちなみに、大哉も母と一緒らしい。  入学祝いにごちそうを作ると言っていたし、その買い出しもあるのだろう。そう考えれば嫌な気分でもない。 「……さて、帰ってから何しようかなぁ…」  ぼんやりと考える。特にこれと言って宿題もない。はっきり言えば暇だ。  すると不意に、頬を冷たいものが触れた。 「……ん?」  瞳は空を見上げる。爽やかな青空が広がっている。しかし、ぽつぽつぽつ…と音を立て、続け様に雫が落ちてくると、みるみる内にコンクリートの地面を黒く染め上げていく。 「うそっ!!」  慌てた瞳は、腕を頭の上にかざしながら走り出す。  ――晴れてるのに、なんでーっ  家へと全速力で走る。四つ辻を通り過ぎた。すると、降ってきた時と同じように雨は唐突に止んだ。吃驚(びっくり)して急ブレーキを掛ける。 「えっ!? ……きゃっ!!」  足下がずるっと滑った。構えることも出来ないまま、尻餅(しりもち)を付く。勿論地面はコンクリートだ。腰と尻を(したた)かに打つ。     
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!