僕の彼女

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あの子を彼女にするためにはどうすればいいか。 その一つ、たった一つの問いに対して、一番ふさわしい答えを出すのにかかった時間は家に帰ってから朝まで。つまりはほぼ半日かかったということになる。 自慢の頭脳も、恋という今まで経験しなかった初めての事態に対しては、ほぼ無力だったということの証明だった。 そして長考の末、出した答えは、「あの子を抱いていたヤナギ男と友好的な関係になり、まずはあの子と友達になる」だった。 いくら僕があの子に対して恋心を抱いていようが、いきなり「あなたが好きです。つきあってください」とでも言おうものなら、即「ごめんなさい」とお断りを喰らい、その日の放課後に河川敷で泣き叫ぶだろう。冗談だろと思う人もいるかもしれないが、それぐらい僕はあの子に本気なのだ。 さて、そうと決まれば善は急げだ。家をいつもより少し早く出て、学校に着く。 教室に入り、時計を見てみると、時刻は7時35分を指していた。始業の時間は8時なので、始業までまだ25分ほどある。 こんな早い時間に学校に来る生徒は生徒会に属する生徒か、ただ単に理由もなく早く学校に着く物好きな生徒の2種類に分けられるだろう。 僕は鞄を自分のロッカーに入れ、ふと教室を見渡した。 あのヤナギ男が来てないかと思ったからだ。半ばあきらめ気味で見渡すと、教室の右端にぽつんと座っていた。そしてなにがしたいのか、口をぽかんとあけて天井を見つめている。 教室に入ってきた僕が全く気付かなかったことを考えると、まるで忍者のような気配の薄さだ。 とはいえ、都合が良い。わざわざ学校に早く来たかいがあったというものだ。
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