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僕はヤナギ男の方へ近づいていく。
するとあっちも僕の気配に気付いたのか、こっちをむいた。
改めてその顔を見てみると、やはり、イケメンというには程遠い顔だった。
こんなやつがあの子を抱いていたと考えると、何ともやるせない気持ちになった。
とはいえ、僕はこいつと友達にならなければいけない。そうしなければ、あの子を僕の彼女にすることなんて、こいつが女子にちやほやされるぐらい、ありえないことだ。
ヤナギ男は、名前を大柳修吾といった。自分でつけたあだ名が、まさか本人の名前と同じだとは思ってもいなかったので少し驚いたが、正直今はどうでもいい。
名前を聞いたのち、僕は大柳にあの子のことについて聞いてみた。
すると、大柳は、少し嫌な顔をして、こういった。
あいつ、駅前にいるよ。なんでって?もう使えなくなったからだよ。
僕はその言葉を聞いた途端、教室から飛び出し、学校を抜け、駅前へ全速力で走っていた。
今まで学校を抜け出したことなんて一度もない。そりゃ不良でもないかぎり学校を抜け出すなんてことはしないと思う。けれど、今はそんなことはどうでもいい。大柳に裏切られた、あの子の心を少しでも癒したい。そんな決意がもう心の中にあったからだった。
学校から駅前までの距離はあまり遠くないので10分ほどで駅前についた。
そして僕は駅前を血眼になって探す。すると、いた。
彼女は駅前のベンチの一つに、ぽつんとひとりきりで座っていた。
僕は彼女に「だいじょうぶ!?」と問いかける。しかし返事はない。ゆすっても、つんつん押しても反応はなかった。ふと彼女の目を見ると、目は閉じていないが、目から光が失われていた。
それを見た途端、僕は大柳が昨日、横断歩道でやっていたように彼女を抱き、再び全力で走っていた。目的地は病院だ。救急車を呼べばいいじゃないかと思うかもしれないが、彼女の体質は少し特殊で、普通の病院に行ってもだめなのだ。幸い僕は彼女がいつも行く病院を知っていたのでそこに向かっている。
走れ、走れ。彼女に一分でも、一秒でも、辛い思いをさせないように。
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