4人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
「何?」
「ちょっと」
言いながら財布を出し、
「百円玉、持ってる?」
中身を確認して、円に問いかける。首を傾げたまま、円は財布を取り出し、
「一枚ならあった」
それを隆二に手渡した。
「ありがとう。借りる」
「あげるわよ、百円ぐらい。ってか何、ガチャガチャ?」
軒先きに数台並んだガチャガチャの機械。その一つに、隆二は自分の分と合わせて二枚の百円玉を入れる。
「美少女四字熟語シリーズ、ラバーストラップ?」
書かれた文字を読んだ、円の語尾が怪訝そうに跳ね上がる。
真緒の好きな特撮ヒロインものだ。この前スマホで見ていた動画も、これ関係のものである。
「真緒がこれ、全部揃えようとしてるんだ。だけど、うちの方ではもうなくって」
ハンドルを回す。がこん、と音がしてカプセルが落ちてきた。
「中野にでも行けば、バラで売ってるんじゃないの?」
「ガチャガチャを中身わかっている状態で買うのは、夢がないからダメらしい」
取り出したカプセルの中を覗き込む。それから、機械に貼ってある紙と見比べ、
「よし」
小さく頷く。ここに載っていないもの、シークレットだ。ようやくこれで揃った。
「……なんかわかんないけど、よかったわね」
「ああ、ありがとう。……ついでにこれ、カバンに入れてくれると嬉しい」
ズボンのポケットに財布とケータイをしまっているだけで、手ぶらの弊害がここに出た。
「はいはい」
円がカプセルをカバンにしまう。
再び連れ立って歩きながら、
「私、あなたの感情はイマイチ読み取れないんだけど、今は楽しそうだなって思うわ」
軽く苦笑すると、円が言った。
最初のコメントを投稿しよう!