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第五章 盾と建前
車に乗り込むと、円はナビをセットした。
「残念ながら、今回遠い」
「いいよ別に、俺は乗ってるだけだし」
そんな話をしながら、車は動きだす。
「しかし、別に現場に行っても何もしてないし、送迎してもらってるし、俺、必要?」
「保険は使わないに越したことないでしょ」
「保険料、払ってるのに?」
「あれは、安心へのお金だから。主として、私以外の一海の人間の安心材料」
盾がいるからというのを理由に、一海の人間としては自分だけが、この件に関与できている。それは、円としては重要なことだ。
「どうでもいい話していいか?」
「どうぞ。先は長いしね」
「そこそこ良い金額いつももらってるけど、あんたのとこって収入源どこなわけ?」
お祓い産業の金の流れってちょっと気になる、とつけたされる。
「あー、ケースバイケース。色々あったんだけど、今ってこの業界、国からの認可がおりてるかが一つのバロメーターになってて」
「認可って、そりゃあ、妙にそぐわない言葉だな」
「気持ちはわかる。でも、ほら、オカルト的なことに対する認識は表には出さないでも一応、国の偉い人とかの間にはあるわけ」
「陰陽師の名残り、的な?」
「そうそう。それで、認可受けてるところには、国からの依頼があるから、そういうのは国からお金もらってる」
国からの依頼は、提出書類が多いので、円自身は嫌いだが、それでも手堅い収入源の一つだ。
「個人からの依頼の場合は、まあ実費ぐらいもらっとこうかって感じ。放っておいて厄介なことになったら、困るのこっちだし。ただ、たまに神経質な金持ち相手のときがあって、そういうときはがっつり正規料金もらってる」
一番の収入源はそこだ。怨みを買いがちなこともあって、結構頻繁に依頼はある。
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