第五章 盾と建前

1/21
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ

第五章 盾と建前

 車に乗り込むと、円はナビをセットした。 「残念ながら、今回遠い」 「いいよ別に、俺は乗ってるだけだし」  そんな話をしながら、車は動きだす。 「しかし、別に現場に行っても何もしてないし、送迎してもらってるし、俺、必要?」 「保険は使わないに越したことないでしょ」 「保険料、払ってるのに?」 「あれは、安心へのお金だから。主として、私以外の一海の人間の安心材料」  盾がいるからというのを理由に、一海の人間としては自分だけが、この件に関与できている。それは、円としては重要なことだ。 「どうでもいい話していいか?」 「どうぞ。先は長いしね」 「そこそこ良い金額いつももらってるけど、あんたのとこって収入源どこなわけ?」  お祓い産業の金の流れってちょっと気になる、とつけたされる。 「あー、ケースバイケース。色々あったんだけど、今ってこの業界、国からの認可がおりてるかが一つのバロメーターになってて」 「認可って、そりゃあ、妙にそぐわない言葉だな」 「気持ちはわかる。でも、ほら、オカルト的なことに対する認識は表には出さないでも一応、国の偉い人とかの間にはあるわけ」 「陰陽師の名残り、的な?」 「そうそう。それで、認可受けてるところには、国からの依頼があるから、そういうのは国からお金もらってる」  国からの依頼は、提出書類が多いので、円自身は嫌いだが、それでも手堅い収入源の一つだ。 「個人からの依頼の場合は、まあ実費ぐらいもらっとこうかって感じ。放っておいて厄介なことになったら、困るのこっちだし。ただ、たまに神経質な金持ち相手のときがあって、そういうときはがっつり正規料金もらってる」  一番の収入源はそこだ。怨みを買いがちなこともあって、結構頻繁に依頼はある。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!