成仏できないクッキーの霊はアキバをめざす

3/4
前へ
/4ページ
次へ
私にまとわりつく霊の正体は、せっかくホワイトデーのお礼として買われたにも関わらず、手渡されることなく粉末状態となり、哀れな男子学生の鞄の奥で圧縮状態になっているクッキーの霊と「でも、言うのだろうか?」とのことだった。 霊の正体が分かったので、とりあえず、呼び出して言い分を聞いてみることにした。 ネコヤナギに似たウチのネコのおもちゃを机の上活けた。次いで段ボールを長方形に切り、ひらがなで「おはか」と書いて、ネコヤナギの下に置いた。 柳とお墓、これで、霊が好んで出現しそうな場所は私の机の上に再現できた。 気分を盛り上げるためYouTubeで映画エクソシストのテーマをエンドレス再生することにした。 あとは、深夜、クッキーの霊が出現するのを待つだけだった。 深夜2時、「もっと、ちゃんとやろうよ」な召霊環境にも関わらず、成仏できないクッキーの霊が出現した。 実体化したクッキーの霊を見た瞬間、私は激しい殺意を覚えた。 そのクッキーは、そこいらのコンビニで売っている国産メーカー380円(税込み)の商品だった。 「テメェ、コラぁ、国産の安物クッキーのくせに、私に取り憑いてんじゃねぇ!!」 「テメェと私じゃ、住んでる世界が違いすぎるんだよぉ!!」 外資系企業で働く姉にはボーイフレンドと書いて下僕と呼ぶ無償奉仕の召使が大勢いる。 その下僕の一人が、姉の関心を引こうと、妹である私に義理クッキーの変化球を投げてきた。     
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加