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新たなる願望
「ところで、遅刻魔が早いな。どうした」
神崎に言われて、岡崎は胸を張った。
「今日は、手の込んだネタをやるので、伊藤と早めに来て、ネタ合わせをするんですよ」
「手の込んだネタ?手の込んだ催眠術の間違いだろう?」
神崎も、「おたんこたす」のネタがウケていない事を知っている。
「見てて下さいよ。今日は、大爆笑間違いなしですから」
「その言葉を信じていいのかね。何度裏切られた事か。」
売れない芸人達の為に、神崎は結構忙しい思いをさせられている。
「本当に頼むよ、お前ら。お前らの為に苦労するのは、俺達なんだから」
「今日は、ウケますよ」
神崎と話している岡崎を見て、摂の目に、ふと岡崎の首が入って来た。
小さな顔を支えている岡崎の首は、大きな喉仏がついていて、そんなに太くない。美しい首筋が目立っている。
その時である。
摂の中に、新たな願望が生まれた。
(この人を殺して、私のものにしてしまいたい)
この人に殺されたい。
この人を殺したい。
矛盾した二つの願望が、摂の中に生まれたのを感じた。願望というか、欲望というか。
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