アイラッシュレイヴ~聖也の夏

1/20
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ

アイラッシュレイヴ~聖也の夏

 港島刑務所。  シャバの空気は、こんなに蒸し暑かったろうか。  ロボットの不正改造の罪により、3ヶ月の刑期を終えた俺は、今まさに塀の外にいた。  鈴木聖也。18才。  前科者になった俺を出迎えたのは、せみの大合唱と、夏だった。  ボストンバッグと紙袋を手に、鉄扉の前にたたずむ。  ドラマや映画なんかでよく見る光景。  まさか自分がそうなるなんて、考えもしなかった。  塀の外にでたら、なにかが劇的に変わる気がしていた。  中での生活は、それくらい堪えた。  でも。なんの感慨もない。  俺は俺のままだった。  空はばかみたいに青く、遠くの雲がもくもくしている。  痛いくらいの陽が肌を刺した。  待たせていたタクシーに乗り、実家へ帰った。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!