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アイラッシュレイヴ~聖也の夏
港島刑務所。
シャバの空気は、こんなに蒸し暑かったろうか。
ロボットの不正改造の罪により、3ヶ月の刑期を終えた俺は、今まさに塀の外にいた。
鈴木聖也。18才。
前科者になった俺を出迎えたのは、せみの大合唱と、夏だった。
ボストンバッグと紙袋を手に、鉄扉の前にたたずむ。
ドラマや映画なんかでよく見る光景。
まさか自分がそうなるなんて、考えもしなかった。
塀の外にでたら、なにかが劇的に変わる気がしていた。
中での生活は、それくらい堪えた。
でも。なんの感慨もない。
俺は俺のままだった。
空はばかみたいに青く、遠くの雲がもくもくしている。
痛いくらいの陽が肌を刺した。
待たせていたタクシーに乗り、実家へ帰った。
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