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「なあ、正子。
仕事を辞めて、ちゃんと産休を取った方が良いんじゃないか?」
と、敏夫は言ってくれた。
しかし…
私は、彼のアドバイスを聞かずに、
「大丈夫!私、まだ仕事をしたいわ!本当に身重(みおも)になったら仕事を辞めるから!」
と答え、それに対して彼も了承してくれた。
私は、まだまだ今の仕事を続けたかった。
こうして私は、週六日勤務の仕事を三日に減らして働き続けた。
そして…
その結果…
私は、体調を崩し…
流産してしまったのである。
私は、涙ながらに敏夫に詫びた。
「あなた、ごめんなさい!
あなたの言う事を聞かずに妊娠中に仕事をして…私は、流産してしまった!私がわがままを言ったばかりに…本当にごめんなさい!」
しかし…である。
敏夫の方も
「いや、謝るのは僕の方だ!本当に、すまない!
僕の仕事の稼ぎが少ないばかりに、妻の君を働かせてしまって!もっと僕が君の事に注意を注いでいれば、こんな事にならなかったかもしれない!君を流産させてしまって…本当にすまない!」
と、謝罪をしてきたのだ。
そして、それ以来…
私たち夫婦は、お互いがお互いに対して、『負い目』と言うか、申し訳ない気持ちに抱くようになってしまい…
ある種の『距離』みたいなものが出来てしまった…
と、いう訳だ。
もちろん、私たちは今でもお互いを深く愛している。
それに、変わりはない。
そして、それから…
結局、私は、かなり迷ったが今の職場を辞めてしまった。
流産してしまった事で、精神的にも肉体的にも、ほとほと疲れ果てていた。
そして、更に数ヵ月の間、私は専業主婦になった。
しかし…
「でも…やっぱり、介護の仕事は、時期を見て再開したいな…」
そう考えた私は、
敏夫の了解を得て、医療・介護専門の派遣会社に、とりあえず登録したのだった。
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