【泣きぼくろ】

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{2} さて。 私が派遣会社に登録して、一ヶ月ほど経った頃… その会社から、ある仕事の話が私の元に舞い込んできた。 それは… 私の前職である介護施設職員の仕事ではなく、 訪問介護の仕事だった。 訪問介護… つまり、介護を必要とするお年寄りの自宅にこちらから伺い、そこで家事をしたり、入浴の介助をしたりする仕事である。 利用者を個別に担当するケアマネージャーが立てたケアプラン(介護計画)の通りに仕事を進めるという点では、介護施設の仕事と基本的にはそう変わらないが、 訪問介護は施設介護の様に複数の利用者を一度に相手にするのではなく、完全なるマンツーマンであり、二十四時間体制で見守る必要も無い。 「しばらくぶりに仕事を再開する私には、ちょうど良い業務内容かもしれないな…」 私は、そう思った。 「うん、良いと思うよ!頑張ってやってみなよ!」 敏夫もそう言ってくれた。 かくして… 私は、その派遣会社の話を有り難くお受けして、 訪問介護の日々が始まった。 派遣先の介護サービス会社の車を運転して、指定された利用者のご自宅を訪問し、 そこで掃除をしたり料理をしたり、利用者の話し相手になったりする。 最初は、会社の先輩社員と二人で訪問先を回っていたが、やがて慣れてくると、一人で仕事を任されるようになった。 一日に回る現場は、四件が通常である。 しかし、私の場合、 派遣会社の担当者に「実は、前の職場で体調を崩し、流産してしまった」 と話していた事が利いたのか、一日に回るのは一件のみ、しかも週二日だけの勤務という、信じられないくらいの好条件での仕事だった。 さて。 実は、この訪問介護の仕事… 時として、自分が担当する利用者のお年寄りが『変わる』事が有る。 その理由としては… 例えば、 『利用者が老人ホームへ入所する事が決まった』。 『利用者が息子夫婦と同居する事になった』。 そして… 悲しい事だが『利用者が亡くなった』…。 など、様々に有るが、 中には… 『担当ヘルパーが退職したので、代打で別のヘルパーがその利用者の担当をする事になった』や… 『担当ヘルパーが特定の利用者から担当を外して欲しいと会社に願い出たので、別のヘルパーがその利用者の介護をバトンタッチでする事になった』 というのも有る。
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