第一章 世界はかくもまわり続ける

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そう。 ずっと平和だったんだ。 些細な喧嘩のようなことはあれど、争いなどなかったはず。 ある日、唐突に朝が来なくなった。 太陽が消えたんだ。 俺も含めて、ある程度力のある者は協力して原因解明に乗り出した。 その中にはもちろんあの人も含まれていた。 月は、変わらず空にあった。 誰も気づかなかった。 太陽が再び空に戻るその瞬間まで、月がずっと。ずうっと空に在り続けていたことなんて。 太陽と月は、この世界を護っていた。 色んな意味で。 太陽は昼を、月は夜を護っていた。 太陽が消えたせいで昼の世界は崩壊寸前だったんだと思う。植物は成長しない、眠気は訪れないが疲労だけ溜まっていく、夜に力を発揮するものたちが世界を取り込もうとする。 昼を護るものが必要だったんだ。 だから、その役目を月が背負った。 月は休むことなく、眠ることなく世界を護り続けた。 その間、月は1日として落ちることはなかった。 結果、太陽が戻ったと同時に月は姿を消した。 月が消滅したのか、眠っているのかは誰も知らない。
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