くたびれたお兄さんにザッハトルテを

ザッハトルテが作りたかったから

「……味見してもらう？」
突然、さいほさんが思ってもなかったことを言ったので、私の声がひっくり返る。
「え？」
「せっかく芽里ちゃんがザッハトルテ作ったならさ、ザッハトルテが大好きな安座上くんに食べてもらいたくない？」
「……食べてもらいたいです」
でも、どうやって渡したらいいのかな。
「13日の朝、うちに持っておいで。冷蔵庫に入れておいてあげる。それで、安座上くんに俺から渡してあげる」
「……うん！」
さいほさんのこういう所が、大人っぽいと私は思う。