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次の日の朝、眠い目をこすりながらさいほさんのケーキ屋さんに向かう。さいほさんは私よりも眠そうな顔で店番をしていた。
「あら芽里ちゃんおはよう」
「おはようございます。さいほさん、ケーキ持って来ました」
私はキレイにラッピングしたケーキを差し出す。さいほさんのとろんとした目がちょっと開いた。
「おや、出来たんだ」
「はい、でもグラサージュがキレイに塗れなくて」
「あぁ、難しいだろ。あれは思い切りよく塗るのがコツだよ」
「芽里ちゃんは几帳面だから気になるだろうけどね」とさいほさんは笑う。
「自分でも食べてみた?」
「はい、味はお母さんも『美味しい』って言ってました」
「そう、安座上くん喜んでくれるといいね」
さいほさんが冷蔵庫に私のケーキを入れると、『これは僕から』と赤い包みを渡してくれた。
「クッキーも得意なんだよ。実は」
「……おいくらですか?」
「芽里ちゃんはいいよ。安座上くんはお金取るけど」
さいほさんが「しーっ」と口元に人差し指を当てる。
「……いいんですか?」
「いいんだよ。芽里ちゃんからバレンタインのプレゼント貰えるなんてずるいじゃないか」
「えっ?」
さいほさんはプロのケーキ屋さんだから渡しても喜んでもらえないと思ったのに。ごめんなさいと言おうかなと思っていたら、さいほさんは優しく微笑んでくれる。
「……冗談だよ、今のは」
「学校遅れるよ」と背中を押して、さいほさんは手を振ってくれた。
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