くたびれたお兄さん

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「今日は帰って寝なきゃなー」 「スーツ、シワになるからハンガーに掛けて寝ないとダメですよ」 もうすでにヨレっとしているし。 「芽里ちゃんはしっかり者だなぁ」 「よくお父さんがお母さんに怒られてたの」 「そっか……」 あざかみさんは哀しそうな顔をする。私のお父さんがもう亡くなっているのを知っているからだ。 「でもお父さんは安座上さんみたいにカッコよくなかったです」 ちょっと太ってた。お陰で「メタボリックシンドローム」という言葉はすぐに覚えられた。 「そうなんだぁ、でもお父さんが俺くらいの頃はカッコよかったろ?」 「ううん、写真で見たらちんちくりんだった」 「ちんちくりんって言葉知ってるのか」 あざかみさんがクスっと笑う。背も高いし目も大きいし、やっぱりあざかみさんの方がお父さんよりカッコいい。
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