13人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
あった。ツルツルした茶色のケーキ。朝六時半は閉店前だけど、一個だけちょこんと残っている。
「今日は、ザッハトルテ」
「ザッハトルテ? 珍しいね。勉強の為?」
「はい、作ってみようと思って」
「僕はビターチョコを使っているからちょっと甘さが足りないかもよ」
さいほさんがケーキを取り出しながら言う。
「大丈夫です。そういえば、あざかみさんもザッハトルテ好きなんですか?」
「安座上くん? あー、確かに週一で買うね。ザッハトルテ」
大人は週一でケーキ屋さんに来れるんだ。私はやっと二週間に一回くらいしか行けないのに。
「一番好きってこの前言ってました」
「え? どっかで会ったの?」
「昨日道でフラフラ歩いていました」
「ブラック企業なんじゃないかな安座上くんの会社は……」
学校で言ってた。ブラック企業に就職すると死んじゃうかもしれないらしい。
「あざかみさん過労死しますか?!」
「いや、そこまでは大丈夫と思うけど」
「この前自分のこと『しゃちく』って言ってましたよ!」
「大丈夫大丈夫。僕の店に来れてるならまだまだ元気だよ」
最初のコメントを投稿しよう!