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ハルが拭き終わった皿を、棚へと戻していく。
「その松虫君に、ぜひ遊びに来てもらって頂戴な。私も会いたいわ。秋鹿の大切なお友達に」
「うん、そう伝えておくね。ありがとう、おばあちゃん」
夕食の間も、秋鹿は松虫との憶い出をハルに語った。ハルも愉しそうにして、そのひとつひとつに相づちを打ってくれた。
風呂に入った後で、秋鹿は宿題のことを憶い出した。急いで髪を乾かして、机に向かった。しかも嫌いな数学だった。なかなか思うようにはかどらない。難問に躓き、盛大に溜息が出てしまう。
もう夜も遅いし、匙を投げて寝てしまいたくなる。けれども絶対に諦めずに最後まで頑張ろうと、思いなおす。自分が今、出来ることを、精いっぱいにやると決めたのだ。それは好きなことだけじゃない、苦手なことだってそうだ。
うんうんと唸りながら何十分とかけて解くと、ようやく宿題が完了した。精根尽き果てて、机に突っ伏す。何度も消しゴムをかけた所為で、プリントはよれよれになってしまったが、達成感が心地好い。
机の上に飾ってあるスノードームと硝子の猫を、両手に取る。美しい輝きが疲れを癒してくれる。どちらも父親から、誕生日プレゼントとして送られてきたものだ。どうして二回もプレゼントを送ってきたのか、その真相はまだ謎のままだった。
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