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 先週の土曜日の夜、秋鹿は母親の夏紀に電話をして、そのことを訊ねてみた。すると夏紀も、 「おかしいわね。あの人、そっちの住所は識らないはずだし、先に別のプレゼントをおくるなんてことも、聞いていないわ」  と、奇妙がった。 「直接、父さんに訊くことは出来ないの、」 「電話ではどうかしら。あの人、今、海外でしょう。それに、日本を出る際に、携帯電話は解約したそうだから」 「何処(どこ)にいるか判らないの、」 「いろんな場処のいろんなお店を転々とするって、手紙にはあったけれど、」 「電話はかかってこないの、」 「電話は無いわね」 「そう……」  秋鹿は肩を落とした。父親からの電話を当てにするのも難しそうだ。 「でも、父さん、どうして急に海外に行くことにしたの?」  夏紀は一瞬、黙り込んだ。眉間に皺の寄った彼女の表情が、ありありと秋鹿の脳裏に泛かんだ。 「本当はね、ずっと前から、そうしたがっていたのよ、あの人」 「え……、」  秋鹿は携帯電話を持ち直した。指が滑りそうになった。夏紀はそれ以上、何も云わない。回線の向こうから、張り詰めたような空気が漏れ伝わってくる。 「そう……だったんだ」  秋鹿はそう云うと、これ以上は踏み込まないことにした。父親からのプレゼントと共に夏紀が送ってくれた冬物の衣服の礼を告げる。
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