748人が本棚に入れています
本棚に追加
/325ページ
次の日の朝、秋鹿が家から出ると、
「あーちゃん!」
松虫が手を振って向こうから駆け寄ってきた。
「草太君、」
「おはよう。ちょうど良かった、一緒に行こう」
「うん」
待ち合わせをしていた訳ではなかった。偶然だが一緒に登校出来るとは嬉しい。
松虫は前の学校の物なのか、手提げ鞄を肩に掛けている。秋鹿たちは肩掛け鞄だった。制服も前の学校のらしく、形は同じだが釦が違う。まだ色々と揃わないのだろう。
「学校にはもう慣れた?」
「まだ一日しか行ってないよ」
「あ……そっか。そうだね」
秋鹿の間の抜けた質問に、松虫はおかしそうに笑った。莫迦なことを云ってしまったと、秋鹿も照れ笑いをする。
昨日はちっともそんなことはなかったのに、今日は少し緊張してしまう。一日経って興奮が落ち着いたからか、離れていた分の時間の隔たりが、二人の距離感を掴み難くしていた。
「あーちゃん?」」
「え?」
「もしかして、まだ起きていない?」
ぼんやりとしてしまったようだ。
最初のコメントを投稿しよう!