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第二章 恋に似た恋
太田高志は、小学校の同級生だ。成績はいつも学年一、二を争そっていたし、運動神経も抜群で、運動会ではいつもヒーローだった。いかにも、やんちゃな顔をしていたけれど、言い換えれば、きりっとしたかっこ良さがあった。当然人気者だったから彼のファンは多く、寧々は遠くで眺めているだけだった。
ところがある日、寧々が学校からいつものようにおばあちゃんの家に向かって歩いていると、道にうずくまっているおばあちゃんの手を引いて立たせてあげている高志を発見した。高志の家はこっちじゃないのにどうしてここにいるのだろうと思ったけれど、そんなことよりおばあちゃんのことが心配だった。寧々は急いでおばあちゃんの元へ走った。
後に、高志は寧々が毎日おばあちゃんの家へ寄るということを同級生の女の子から聞き出し、偶然出会ったことを装うために近くに来ていたと白状した。
「おばあちゃん、大丈夫?」
「ああ、寧々か。大丈夫だよ。急いで帰ろうと思ったら躓いて転んじゃったのさ。でも、この男の子がすぐに駆けつけて助けてくれたんだ」
「高志君、ありがとう」
「えっ、寧々、知ってるの?」
「同級生だから」
「あらあ、そうだったの」
「はい、そうです」
高志が寧々のほうを見て言った。
「それは奇遇だこと。それじゃあ、うちに寄ってもらいましょう。お礼しなくちゃね」
「いえ、僕はそんな…」
はにかんだような口元に寧々は見とれた。
「高志君、一緒に来て。私、毎日おばあちゃんの家に寄ってるの。ちょうどこれから行くところだから」
「わかった」
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