第二章 恋に似た恋

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 寧々と高志は顔を見合わせて答える。でも、おばあちゃんが言いたいことは二人ともわかっていた。ただ、これから大人になっていく過程で二人の気持ちが変わってしまうのではないかという不安が寧々にはあった。それが大人になるということでもあると思っていた。でも、高志はそんな不安を感じていないようだった。  だが、二人の別れは大人の事情であっけなく訪れた。6年生になって間もなく、寧々の父親の転勤が急に決まったからである。小学生同士のまだ『恋』とは呼べない『恋』など考慮されるはずもなく、私たち家族はまさしくドタバタと引っ越していくこととなった。寧々自身もその準備のため慌ただしく時間を過ごし、気がついた時は最後の登校日だった。だから、この間、高志とは話す機会がなかった。  一時間目の授業が終わる少し前に教室の外で待っていた寧々を担任の原口が呼んだ。 「いいか、すでにみんなも知っているように浜口寧々さんがお父さんの仕事の関係で急遽転校することになりました。今日が最後の登校日ということで、本人から挨拶があります。じゃあ浜口さん話してください」 「みなさん」  寧々は教室全体を見渡した後、高志に目を留めながら話した。高志はじっと寧々を見つめていた。その目があまりに一途であったため、寧々はたじろいでしまった。 「このクラスでずっと一緒に過ごせたこと嬉しかったです。みんなと作った楽しい思い出は忘れません。本当にありがとうございました」  ありきたりだけど、思いを込めて言った。仲の良かった子たちが涙を流しているのを見て、寧々も泣きそうになった。 「浜口さんありがとう。ということで、浜口さんは次の学校に行っても頑張ってくださいね。では以上」
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