第二章 恋に似た恋

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 ちょうどその時、授業終了のチャイム鳴った。休み時間になり、担任の原田が出て行くと仲の良かった女子生徒たちが寧々を囲んだ。今度はどこに行くの? 公立なの私立なの? といった質問が次々と投げかけられる。それに答えながらも寧々の目は高志を探していた。だが、高志の姿が見当たらない。何もいわずに引っ越してしまう寧々に対して怒っているのだろうか。あっという間に休み時間が終了になり、みんなちりじりに自分の席へ戻り始めたその間を縫って高志が現れ、あの封筒を寧々に渡したのであった。その場で中を見たかったが我慢した。家に帰ってすぐに封を開け中を見た。破ったノートに走り書きのような文字があった。さっき高志が見当たらなかったのは、どこかへ行って急いでこれを書いていたからであろう。読んだ時、嬉しかった。短い文章だけど、高志の思いは伝わった。  でも、高志よりひと足先に大人になりかけていた寧々は、小学生同士の思いなど転校することで自然に終わってしまうものだと諦観していたのである。   ただ、高志との『恋』に似た『恋』は寧々にとっても宝物だったので、この引き出しにしまっておいたのだった。だが、今改めて見返して、二人の『恋』が終わっていなかったことを、おばあちゃんが気づかせてくれた。
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