廃墟

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翌日、NBC偵察車は〝もんじゅ〟の裏山に出た。1991年に稼働をはじめたそれは2016年に廃炉が決定した。その25年の間に稼働したのは僅か250日、注がれた国費が1兆円強という金食い虫だ。 その廃炉も順調にはいかず、費用は増えるばかりだった。そうしている間に4月戦争で被災。廃炉作業の遅れが戦禍の陰に隠れたのは、政府にとって都合がよかった。 「あれが〝もんじゅ〟の燃料プールか……」 クレーン先端のカメラがとらえた映像を目にして3701号がつぶやくと、「燃料プールの残骸というのが正しいだろう」と、3702号が訂正した。原子炉の解体は済み、敷地内に残っていたのは燃料棒から液体金属ナトリウムを取り除く施設と核燃料プール、管理棟だったが、それらは焼けて黒い廃墟となっていた。 「残っていた金属ナトリウムが発火したんだな」 「液体金属ナトリウムは不安定だから……。水酸化ナトリウムになっているだろうけど、個体か液体か……、どんな形状で残っているにしても気をつけないといけないわよ」 3709号の声がする。
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