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事体が変わったのは、2031年4月……。ナイトメアシステムによるミサイル迎撃実験に失敗した時だ。
ナイトメアシステムはサイコファイターと呼ばれる人間の意識を機械的に増幅してミサイルや魚雷を誘導するシステムだ。サイコファイターの意識を直接迎撃ミサイルに送り込むことで、ジャミングによる敵の妨害を無力化できる。
自衛隊はナイトメアシステムを潜水艦に搭載し、アメリカ国防総省に貸与することで実践的な研究を行い、海中での実績を積み上げていた。海中での運用の成功に自信を深めた日米同盟軍は、日本に飛来する中距離弾道ミサイルの迎撃実験を行った。その際、目的物である模擬ミサイルに誤って核弾頭を搭載したものが使用された。
3発の内2発の模擬ミサイルは自爆による破壊に成功したが、1発は間に合わず福井県の原子力発電所上空で爆発した。核ミサイルによる強力な電磁波で福井県周辺の電気設備がことごとく故障、周辺地域の原子力関連施設が全電源を喪失する事態に陥った。そうして無人と化した複数の原子炉は制御不能に陥り、核燃料プールでは核燃料が再臨界を起こした。
核ミサイル攻撃とそれに連鎖する核施設のメルトダウンにより、40万に及ぶ日本国民が犠牲となった。南は京都市、西は豊岡市、東は本巣市樽見に至るエリアに避難命令が出され、若狭湾を囲む市町村は立ち入り禁止地域に指定された。
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