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「で、何か指示は?」
3701号が問いただす。
「3701、慌てるな。データを送ったばかりだ」
「敦賀に到着したことは報告してあるだろう?」
「あぁ、そのことなら了解した旨の返信があった。しかし、それだけだ」
「そうか……。早朝とはいえ、本部はのん気なものだな」
3701号は、初めて佐藤技師のミイラを観察した。干乾びた姿から、42歳という年齢は想像もできなかった。彼一人が踏ん張ったところでメルトダウンを防ぐことは出来ないと分かっていただろう。それなのに彼は、どうして留まったのか……。それとも彼は、メルトダウンしないと考えたのだろうか?……3701号は首を傾げる。
「遺体は収容するの?」
3707号が訊いた。
「事前にそうした指示は無いが……」
「家族は待っているでしょうね」
「運び出したところでこの放射線量だ。火葬しても遺灰が返されることはないだろう。建屋の方を見て来る。3707は、ここで待機していてくれ」
3701号は管理棟を出て原子炉建屋に向かう。
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