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「作業の進捗はどうだ?」
質問すると3703号の返事がある。
「現在1号炉にいる。……発信機と上部、中部の線量計、温度計、圧力計の設置は済んだ。これから原子炉下に下りる。……わざわざ来ることないぞ」
「いや、見ておくだけだ」
3701号は散在する汚染瓦礫をよけて歩き、仲間が作業をしている建屋に入った。核反応による熱が、むっと襲ってくるのが分かった。水を湛えているはずの核燃料プールは底が抜けてからになっている。
発信機から伸びたケーブルを眼で追うと、それは原子炉建屋の下へ続いている。見下ろすと核容器の下部に巨大な水たまりがある。冷却が滞って核反応を起こした燃料棒は、その中で他の素材と混じってデブリと化しているのに違いなかった。水たまりの周囲に動く3703号らのヘルメットが見えた。3709号が水に潜って温度計を設置しているところだ。
3701号が仲間の元に下りようとした時、「本部から指示があったわよ」と、レシーバーから3710号の声がした。
「それで?」
3701号は足を止め、情報タブレットに眼をやる。新たに設置した計器のいくつかは稼働し始め、データが表示されていた。建屋内の温度は46度ほどあった。遺体は生き返らないが、原子力施設は生き返ろうとしている。そう感じた。
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