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「遺体は、回収して欲しいそうよ」
「そうか……」NBC偵察車まで遺体袋を取りに戻るのは面倒だと思った。
「すまない。作業を続けてくれ」
3701号が声をかけると、建屋の底にいる3703号が見上げて「おう」と応じた。手を振り返して向きを変えた。
出口へ向かうと、「袋、届けましょうか?」と、3710号の声がする。気持ちを読まれたように感じた。
「いや。君たちはそこにいてくれ。順番に仮眠をとるんだ」
3703号たちの作業が順調に進めば、夜には終わる。次の現場は半島の反対側にある〝もんじゅ〟の廃炉現場だ。夜中に移動することになるから、運転手らには寝ておいてもらう必要がある。
「それなら、私が……」
3707号の声がした。管理棟の方がNBC偵察車には近い。
「そうだな。そうしてもらえるかい」
「任せて。遺体と二人きりでいるより良いもの」
「あまりいい冗談じゃないな」
3702号の声に混じり、いくつかの笑い声がする。
「3702だって、遺体と二人になったら分かるわよ」
3707号の声は怒っていた。
「君だけ残して悪かった。僕もすぐに戻るよ」
「そうして。袋に詰めるのは、3701に任せるわ」
3701は返事をせず、ただ足を速めた。
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