廃墟

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「3709、そこに燃料棒が残っている可能性は?」 3701号が訊く。 「廃炉の経過報告書が正確なら、ないはずよ」 「正確なら……。条件付きということだな」 「噓の報告や、報告書の改ざんは日常茶飯事だから……」 「なるほど……」 「世間話をする暇があったら、お前たちも外に出て切り倒すのを手伝え」 車外を歩く3704号の抗議の声がする。 「代わりに、水酸化ナトリウムのプールを泳ぐのは、僕がやるよ」 3701号が応じると、「助かるわぁ」と3707号が笑った。 「3707、君も僕と一緒だ」 「なに? 何の話? 僕もまぜてくれよ」 仮眠から目覚めた3705号が話に割って入ると、いくつもの笑いが交差する。そうこうしているうちにNBC偵察車は〝もんじゅ〟の裏手を通り過ぎて斜面を下り、舗装された道に出た。
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