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〝もんじゅ〟の敷地内に建築物は少なく、放射線を遮る障害物が少ない。燃料プール付近はNBC偵察車も故障しかねないほどの高放射線量だった。近距離無線にもひどい雑音が入るため、通信は可視光通信に切り替えられた。それは、視認できる範囲なら水中や強放射線の中でも、音声会話に支障が生じないものだ。
「念のためブレードを前面にして停車しよう。1号車が先頭。各車両間に10メートルの距離を取る」
3701号は、NBC偵察車の故障という最悪の事態を想定した。鋼鉄製の厚いブレードは、多少でも放射線の遮蔽機能が期待できる。3号車だけでも生き残れば、全員を載せて撤退できるという計算だ。
「30メートル程度離れても、誤差の範囲じゃない?」
3号車を操縦していた3709号の声がした。
「誤差の中でも無事ならいいさ。リスクを減らすために、最大の注意を払おう」
2号車の3703号が3701号を支持すると、3709号も素直に従った。
「機器の設置は奇数組でやる。偶数組は車内に戻って休んでくれ」
3701号が指示すると、「このまま偶数組でやっちまおう」と3704号が応じた。
「私は休みたい」「僕もだ……」
3706号と3702号の声があり、3701号の指示通りにすることに決まった。
奇数組が防護服に着替えるのを待ってハッチが開けられ、搭乗員が入れ替わる。
「これだけぶっ壊れていると、やることは簡単だ」
3705号と3709号が壊れた燃料プールから遠い位置にマンガンイオン蓄電装置と通信機器の設置に向かい、3703号と3707号は燃料プールのセンサー設置に向かった。
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