廃墟

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「蓄電装置に問題はないが、本部に電波が届かないんだ」 3705号の声がレシーバーから流れる。 「機器に問題はないんだな?」 「ああ、電波障害だ。いま、設置位置を変えている」 「分かった。3709は?」 「一緒だ」 「距離を取るより、遮蔽物を作ったらどうだ。鉛シートがあるだろう」 NBC偵察車内にいる3702号の声が届く。 「今はそれで間に合っても、台風の時機を乗り越えられるとは思えない」 「どのくらいの距離を取るつもりだ?」 3701号は訊いた。 「約1キロ。山頂の気象観測施設の影にアンテナと通信装置を設置するつもりだ」 「それはいいな。詰所が遮蔽物になる」 3702号は満足げだ。 「分った。燃料プールへの電源ケーブルは僕が敷こう」 蓄電装置が3701号の視界に入る。足を速めてそこに行くと、背負っていた調査機器を降ろし、電源ケーブルのロールを電源装置に接続して元来た方向にロールを転がした。
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