廃墟

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放射性物質が崩壊する際に発する放射線にはα線、γ線、β線、X線、中性子線があって、物質を透過する力や、電子機器や細胞に及ぼす影響など、それぞれに性質が異なる。壊れた燃料プールの内外に設置されたセンサーに電源ケーブルを接続すると、機器は正常に作動した。そうしてタブレットに送られてきたデータを見ると、その場所では全ての放射線が検知された。 「α線や中性子線があるのは驚いたな」 3703号が声を上げた。 「α線があるということは、核物質が身近な場所にあるということだ。しかし、この程度の線量なら慌てることは無いだろう」 3701号は3707号と共にコンクリートの床に鋼鉄の杭を打ち、電源ケーブルを固定する作業を続けながら言った。 「α線はプルトニウム由来のものだろうが、中性子線はどうみる?」 NBC偵察車内にいる3708号が訊いた。 「燃料プールでは核反応が続いている。多少の中性子線が検知されても不思議ではないだろう。詳しいことが知りたいなら、本部に訊いてくれ。分析は彼らの仕事だ」 「そうよ、3708。そんなことより、さっさとやっつけてしまいましょう。身体がだるくなって来たわ」 「3707の言う通りよ」3710号が言った。「モニターを確認して。被ばく量が半端じゃない」 「了解。3705、発信機はどうだ?」 「設置完了。電源をオンにする」 「ヨシ。各自、車両に戻れ。3710は、本部に報告を入れてくれ」 施設内に分散していたニュータイプ達は、NBC偵察車に向かった。
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