プロローグ

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白石総理がニュータイプ創造を託そうとしたのは、かつて放射線に強いクマムシの研究を行っていた千坂朱音博士だった。が、彼女は、人工子宮による出産を手掛けたことによって学会から追われ、不遇の生活を送っていた。おまけに夫の千坂亮治を4月戦争で失っていた。 「博士は、放射線に強い細胞の研究をしていたと聞きます。是非、廃炉作業に御助力いただきたい」 白石の申し出に朱音は不快そうな表情を見せた。彼の仕事に手を貸すということは、悪魔の所業を自分の手で行うことになると理解していた。結局、朱音は、夫と開発した人工出産システムを政府が公認することを条件に、ニュータイプの創造に着手した。 そうして開発されたチサカ細胞を持つニュータイプは、人間の3倍のスピードで成長するだけでなく、過酷な環境で生きるための強靭な肉体を持っていた。 彼等は放射性物質除去技術者養成センターという養育施設に隔離され、核関連施設の解体や汚染物質の除去だけを使命とし、技術的にも精神的にも、徹底的に教育された。人によっては精神的教育を、マインドコントロールと呼ぶかもしれない。
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