第2話  灼熱地獄 その2

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第2話  灼熱地獄 その2

「除染作業員って知ってる?」 「原発事故の後のあれですか?」  何とも歯切れの悪い、いい加減な返事をしてしまった。勿論、除染作業員という言葉は知っている。  福島の原発事故後、放射能で汚染された地域を除染するという漠然とした知識である。でも具体的なことはなにも知らない。ただ福島第一原発の、屋根を吹き飛ばされた無惨な建屋のテレビ映像だけは目に焼き付いている。約四年半前の記憶だった。 「実は五月に除染作業員として福島に三日間だけ行っていたんだ」 「え、たった三日間だけですか?」  せっかく福島まで行きながら、三日間だけというのはあまりにも短すぎる。何があったのだろうと疑問に思った。 「いや、行ってはみたのだけど話が全然違っていたので、会社と喧嘩して三日で帰ってきてしまったんだ」 「話が違うって?」 「無料の宿舎が一人一部屋ということだったのに、行ってみると六畳に二人とか三人になると言うんだ。これじゃあ、まるで蛸部屋だろ」 「それは酷いですね。でもそれならどうしてまた行くのですか?」  当然の疑問だと思う。俺だけではなく、誰が聞いてもそう思うのではないだろうか。 「それがその時一緒だった人とまだ電話でやり取りをしているのだけど、他の会社に移ってかなり良い条件で働いているらしいんだ」 「悪い会社もあれば、良い会社もあるのですね」  その時は他人事だったので『まあ、そういうこともあるのだろうな』という程度に聞いていた。 「それならもう一度行ってみようかと思っているんだけど、松田さんも一緒にどうだろうか?」 「え、俺も?」 「知らない土地に行くのだから、知り合いがいた方がお互いに何かといいかと思って」  意表を突かれた申し出だった。しかしそれが胸に突き刺さった。  正直、九月末に終了してしまう今の仕事の後はノープランだった。早く次を決めなければと焦ってもいた。 「いいですよ。山田さんと一緒なら」  俺は深く考えることもなく、自然とそう答えていた。  一人だけだと心細いのだけれど、この人と一緒だったら……甘えのようなものもあったのかも知れない。
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